その20/勝どき橋あたり、『かねます』の「ハゼ子」
熱心なアテファンの方ならご記憶されていることでしょう。
またまた登場の名店、『かねます』。
やはりここでしか食べられないアテのご紹介。
日本に生まれた喜びは、四季折々の旬のアテに出会えること。
そして、僕に旬を教えてくれるのはやっぱりあの店である。
勝どき橋を渡り、野暮なトリトンスクエアが見えてくるあたり、
なんと三たび登場の名店、『かねます』の縄のれんが見えてくる。
「またあそこかい?」と言うなかれ、このアテはここにしかない。
「ハゼ子」とは、読んだそのまんま、つまりハゼの子である。
ボラの子は親と違って美味で、高価で有名なカラスミ。
しかし、「ハゼ子」の美味しさを知っている人は少ないはずだ。
見た目も、極めてカラスミに似ている。製法もほぼ同じ。
簡単に言えば、ピーナッツ大のカラスミだと思えばいい。
肝心の味の方は、やっぱり少しカラスミに似ている。
だが、もっともっと濃厚でクリーミー、さらに芳醇。
一度「ハゼ子」を知ってしまった舌には、カラスミなどもはや
「なーにこれ?でっかいばかりで味がない、物足りないなあ」
と、贅沢な文句の標的になってしまうこと間違いなしだ。
この「ハゼ子」、なんせ一腹が小さいため、小鉢に盛ると、
なんと30匹から40匹の「ハゼの子」がのっている計算になる。
プチっと噛み、グビっとハイボールを飲む。
この幸福に出会えるのは、毎年12月から1月の約一月だけ。
塩漬けし、塩抜きし、天窓近くの冷蔵庫の上で一晩干す。
シンプルだけど名人技が要求される「ハゼ子」のできあがりだ。
しかしこの「ハゼ子」」、余所で見たことがないのが不思議。
ある日、お父さんに聞くと明快な回答が返って来た。
「あー、コレね、築地中のが全部ウチに来るんですよ」
なーるほど、あまりにも分かりやすい理屈である。
「ハゼ子」と大根の絶妙のカップルに酔っている内に、
蒸し物がそろそろ上がったようだ、仕上げの葛がかかる。
さてさて、白子(河豚)のフカヒレ蒸しの出番だ、ううーっ。
築地市場の食材が一箇所で独占されてるというその状況だけで興味深々! (T.T.)

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。