その43/河原町九条あたり、『水月亭』の「小袋さし」

どんな町にも表と裏があり、
華やかな町ほどその陰影は鮮やかになる。
今日は京都、河原町のアテなり。


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仲見世の喧噪を冷やかし、浅草寺詣りをする観光客たちは、
三社様の本体である浅草神社をお詣りすることはないだろう。
ましてや、浅草寺の裏、ひさご通りや千束通りには行かない。
京都に集まる観光客たちも、京都駅から南に行くことはない。
そこには、新幹線からは見えない風景が広がっているからだ。
映画『パッチギ』で描かれた世界は駅のすぐ裏、東九条だ。

日本が世界に誇る観光都市・京都は、常に少数の弱者を叩き、
いないはずの存在として、多くの人たちを無視し続けて来た。
チャラチャラしたお金持ちたちが川床で贅沢を極める鴨川、
その同じ川の下流ではバラックが身を寄せながら建っている。
そこには長い間、生活の基本、ライフラインさえ通らなかった。

京都でいちばんのご馳走、水月亭のホルモンを食べながら、
目頭が熱くなったとしたら、それは怒りの涙に違いない。
ずっと昔、まだ危険だったハーレムで食べたソウルフード。
子供の頃、友だちの家で食べさせてもらったキムチの香り。
忘れられない思い出は、いつも強いスパイスの匂いがする。
懐石料理の美しさは、嘘と欺瞞の隠し味でできている。


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大好きなネーヴィル・ブラザーズのシリルと握手したとき、
「We are one race」と彼は微笑みながら、力強く僕に言った。
白でも、黒でも、黄色でもない、Humanという同じ種族だ。
打ち上げで、スパイスいっぱいの煮込み料理を食べながら、
ブラジルのカクテル、カイピリーニャを何杯も飲み続けた。
いろんな思い出が水月亭の小袋さしを食べながら蘇って来る。

水キムチはまるで上品なサラダのようだ、口中を涼しく洗い、
いよいよ後半戦はホルモンを焼く時間だ、天肉も貰おう。
名物の皮付き蒸し豚も、ここでしか食べられない味の豚足も、
どれもこれもが滅法旨く、怒りの涙が歓喜へとシフトしていく。
マッコリの穏やかな酔いに包まれながら、ジョンの唄を思う。
この世界は、いつになったらひとつになれるのだろうか。
怖れと誤解と悲しみで作られた国境なんて、なくなればいい。

京都でイマジンか。沁みるかもなあ。(T.T.)


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