その61/目黒東山貝塚あたり、『不二』の「豚ロース」

何の心配も気兼ねもなく旨いものを食べたい。
それがアテの心意気!
今日は、入り組んだ目黒からお届けします。


TTATE1028A.jpg


いくつになっても、いつも財布の中を気にしてばかりいる。
だから、上品な高級フレンチなんぞには出向かないし、
もともと、モツあたりのほうが好きだし、性に合っている。
今いくらぐらいだろうなどと、頭の中で暗算していたら、
せっかくのご馳走が台無しだし、旨くなくなってしまう。
だから、寿司屋で飲むなんて勇気も持ち合わせていない。
もうひとつ、目の前で焼いてくれる鉄板焼きも恐ろしい。

目黒区の領域はとても難しくて、目黒駅は目黒にないし、
目黒銀座は中目黒だし、大橋、青葉台、東山あたりも、
世田谷区と微妙に縺れ合いながら、急に出現したりする。
池尻と三宿を繋ぐ旧大山街道を、ふと左に折れると、
東山貝塚跡が子供たちの遊ぶ小さな公園になっている。
その程近くに鉄板焼き、ステーキと書かれた小奇麗な店。
おっ、高そうだなという予感は、扉に張りっぱなしの
ランチ・メニューの値段で即座に解決される、安い!

牛を除けば、「豚ロース」も、ハンバーグも、ミックスも、
すべてアンダー千円で、味噌汁とご飯、野菜炒めが付く。
夜は、ランチの価格が定食から単品に変わるだけ、
いちばん高い牛のヒレも四千円、牛ロースは三千五百円。
他の肉類はすべて、付け合わせの野菜炒めも付いて、
牛以外はみんな千円以下、アサリのワイン蒸しも、
ツブ貝や椎茸のバター焼きも、鮭やタンなどもある。
注文すると、笊に盛られた食材がテーブルに運ばれ、
調理の最初から、マスターが目の前で焼いてくれる。

白衣を着て、三角巾を被った女性たちの心地よい動き、
寡黙なマスターが時折見せる、とびきりの笑顔……。
ひとつひとつの食材の美味しさを的確に引き出す、
鉄板を知り尽くした職人芸が目の前で展開される。
いつもは飲まない生中なんてのが、どんどん進む。
醤油さしに入れられた特製のタレ、ニンニクソース。
『不二』オリジナルのタレは野菜にも、肉にも相性がいい。
最初、ここに出会った夜、次の日はランチに出かけた。


TTATE1028B.jpg


鉄板でジューシーに焼かれた豚ロースは、アテにも、
白いご飯のおかずにも、両方いける癖になる味。
ハンバーグや季節の牡蠣バター焼きも、すべて旨い。
八王子辺りから進出した和風建築の鉄板焼き屋じゃ、
すべての料理に、もうひとつゼロが増えるに違いない。
だったら断然、『不二』に十回通いつめた方がいい。

家族連れ、カップル、舌の肥えた著名人、ご老人、
誰もが鉄板の前で、マスターのコテ捌きに見とれる。
ここは、白いご飯と赤出しの味噌汁も格別に旨い。
すべてに手を抜かない姿勢と、温かな店の雰囲気、
おいしいものを手頃な価格で提供しようという心意気。
わざわざ池尻大橋の駅まで足を伸ばしたとしても、
決して誰も後悔なんぞしない、『不二』はそんな店だ。

「安くて旨いものなんてない」と断言される方もいますが、う~ん、どうでしょう? (T.T.)


T・T ディレクトリー   リンクフリー   プライバシーポリシー      運営会社