その74/ジャンジャン横丁あたり、『本家ホルモン道場』の「赤セン」

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その昔、流しのタクシー拾って「天王寺!」、
そう告げると運ちゃんは怪訝な顔をしたものだ。
「ケッタイなとこ行きまんな、道よう知らんで…」
すらすらと他所モンの男が道を指定したりすると、
じろじろと珍しそうに視線のシャワーを浴びる。
実際、通天閣あたりには女子供は少なかった。
じゃりん子チエな地元のコだけが元気に走り回る。

九州で生まれ育って、東京で暮らしていて、
映画「どついたるねん」あたりで大坂に惚れた。
そんな100%他所モンにとっての憧れの大坂。
それはつまり天王寺あたりのディープなノリ。
ジャンジャン横町こそが大坂のブランディング。
しかし、一時はこの横丁も絶滅寸前になっていた。
そこに乗り出したのがロコの星、赤井英和兄い。
彼の露出と共にここいらの串カツは赤丸急上昇。
昼間っから婦女子が行列する界隈に変貌した。

何店かある串カツ屋の喧噪を通り過ごし、
男は黙って『本家ホルモン道場』の暖簾をくぐる。
ここは大坂ならではの鉄板焼きホルモンの殿堂だ。
畳半畳はあろうかという巨大な鉄板の前で、
店の主人が次々と客の注文を復唱しながら焼く。
付け合わせのモヤシは左側で大量に湯気を上げ、
その横でホルモンが焼かれ、重石で完成していく。
まずは「赤セン」、もちろん売春禁止法とは関係ない。
関西では牛の第四胃ギヤラを赤セン(マイ)と呼ぶ。

味はあらかじめ付けられたウスターソース味。
しかもブルドックとかハチ公なんて味ではなく、
関西ローカルな独特のソースの味わいがたまらん!
いい感じにくたったモヤシの触感も天下一品。
焼き物だけでも、ミノ、タン、赤セン、コメカミ、
ミノ湯引き、マメ、キモ、ココロ、チョウ、
アブラミ、ツラ、そして盛り合わせと豪華絢爛。
選択に迷ったら、まずは生レバか生センを注文。
胡麻油と関西葱に潜む禁断の大坂を放り込もう。


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ひと通り、好きな焼きもんを平らげていると、
軟弱な東京モンには、段々モヤシの量がきつい。
と、そこにポーチ抱えたショールカラーの親父。
まんまロコのパンチ頭で「ミックス、モヤシ抜き!」
なんや地元のおっちゃんもおんなじやんケと、
勇気を振り絞りつつ、モヤシ抜きのコメカミ追加。
もはや串カツなんぞは、とても胃には入らない。
『ベイビー』あたりでハイボールでも飲んで帰ろ。
通天閣の明かりが妖しくドーパミンを誘っている。


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