『あと...』シズル

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広告の世界では“シズル”という言葉をよく使います。ビールや清涼飲料水ですと、太陽×汗×ぐわっと飲んで爽快! の表情が王道。自動車だと、斜め下からクルマを仰いだり、颯爽と走るシーン。英語のSizzleから来ています。
「焼けるような」、と言う意味で、ステーキが焼けるときの「じゅーじゅー」という音、煙、匂いなどが食欲を刺激するように、商品の購買意欲を本能的に喚起させるためのシーンやテクニックを言います。

余談ですけれど、広告の世界の人間はそこで使われる言葉の意味をけっこう知らずに慣例的に使っていて、「その元の意味ってなに?」って聞くと互いに顔を見合わせることがよくあるんです。
そんな言葉のひとつに「香盤」という言葉があります。撮影の際の段取り表なのですが、これ、元はと言えば歌舞伎から来た言葉。

で、歌舞伎座です。(長いっ! ようやく絵とつながったよ)
写真は、銀座の歌舞伎座。連日大にぎわいです。まあ、普段からけっこうなにぎわいなのですが、この看板が現れたころから、一段と観客が増えているようです。
看板、見えますかね? 電光掲示板を使って、『あと○○○日』と歌舞伎座閉館までの日数を示しています。
この『あと○○』、どこの国の人も好きですねえ。大売り出しの際の「残りあと○個!!」なんてのは、その典型ですよね。購買意欲を煽る、つまりシズル言葉、です。

…なんてふつふつと考えると、僕がこの看板にな〜にか苦笑いまじりの違和感を覚えた理由が明確になってきました。
歌舞伎→伝統→格式という“期待値”をまったく裏切る手法が用いられているからなんですね。これ、いいとか悪いとかの問題ではないですよ。ホント。まあ、よく言われることですが、もともと『歌舞伎もの』って『やんちゃ』ってことですからね。

僕が言いたいのは、生活者が持つある期待値をなんらかの形で裏切ると、思いもかけない効果が生まれる、ってことなんです。
とは言え、構想中の新歌舞伎座はあまり好きになれそうにないですが。今のところ。


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