“ホノルル”トレーニング実行中/治療編(1)
ヒザ爆弾
ランニングをはじめてからずっと気になっていたことがあった。大げさに言えば肉体不安。ポイントを挙げるとヒザ。それはトレーニングを開始して、すぐにやって来た。
最初のころは翌日あたりに痛み出し、1日か2日おいてなんとなく和らいだらまた走るパターンでごまかしていたが、そのうち走っている最中でも痛むようになった。ヒザのお皿の周囲。それと裏側。ふくらはぎの張りは常に自覚症状があった。
ヒザが痛むだろうことは覚悟していたのである。僕はアイスホッケーを週1回ほぼ欠かさずやっているんだけど、スケートで氷上を移動するのと、細かいジャンプを繰り返すランニングでは、体重の受け止め方がかなり異なる。だから、基礎体力的にはそこそこ自信があったが、ヒザの使い方の違いで戸惑うことは予想できていた。
がしかし、なかなか癒えないのだ。「ランニングスタイル」編集長のジャックに聞くと、「地肩ってのがあるでしょ。野球なんかでよく聞くやつ。あれと同じで、走れる足になるために、“地ヒザ”をつくる期間ってのが必要なんですよ。僕もそうでしたから。そのうち必ず痛みは引きますよ」と言う。
なるほどそういうことなのかと納得し、痛むときには走るのを控えつつ、10月までなんとかトレーニングを続けてきた。
でも、引かない。ジャックの嘘つき。いや、あるいは、僕のヒザは少なくともジャックより長期の地固め期間を要するのだろうか? けれど、ここまで来て“地ヒザ”ができていないとしたら、果たして“フル”なんて走れるんだろうか?
なんだか自分でもバカみたいだと思うけど、どんどんナーバスになってゆくのである。ホノルルみたいな場所で走るんだから、もっと気楽でいいはずなのに。ある人はこんなことを言う。
「ホノルルマラソンに出た人の話を聞いたことがあるけど、全然トレーニングなんかしないで参加したのに6時間くらいでゴールしたんですって。だから、変に練習なんかしないほうがいいかもしれませんねぇ」
たぶん彼には悪気はない。が、その邪気の無さが僕を傷つける。得てして人生なんてそんなもの。仮にそうだとしてもと、この数ヶ月のオレの努力はいったい何だったんだ?
とか、さらに悩みは深く深く深く。
そんなわけで、健康診断さえほとんど足を運ばない僕が、ついに専門医の門を叩いた。もしかしたらとんでもない爆弾を抱えているかもしれないヒザの事実を知るために……。
