イカとクジラ (0001本目)

『The New Yorker』はすごい!

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『イカとクジラ』。
のっけからインパクトのあるタイトル。たとえば、『王様と私』とか『トリスタンとイゾルデ』なら、ちょっとした知識があればどんな話か見当はつくけれど、いきなり『イカとクジラ』だ。それがアレゴリカル(寓話的)なものなのか、はたまた昨年、世界中で大ヒットした『皇帝ペンギン』のような感動的動物ドキュメンタリーなのか、タイトルからではまったくもって想像がつかない。

実際のプロットは、ブルックリンに住むある家族の話。両親と息子ふたりの4人家族で、両親はそろって名の売れた作家だ。特に父親のバーナード(ジェフ・ダニエルズ)は、自らをインテリとして、PhD(博士号)を持たない者は人間のクズとして取りあうそぶりも見せない。

その態度は、ある意味とても潔いのだ。しかしその潔さに説得力がないのは、一度は売れっ子作家だったものの、いまではエージェントもそっぽをむく落ちぶれ文筆家になりさがってしまったから。しかしその逆に飛ぶ鳥を落とす勢いなのが妻(ローラ・リニー)。いやがおうにも夫婦間の緊張は高まる。

そのテンションが一気に沸点に達するのが、妻の新作が『The New Yorker』誌に出版されたときだ。街で会う人みんなが、「『The New Yorker』で読みましたよ、あなたの小説。とても心を打たれました」なんてことを口々に言う。当然、旦那は気に入らない。とても気に入らない。そしてストーリーは新たな展開を迎える。

そこで、思った――。

『The New Yorker』ってすごいんだぁー。
最近読んだ『The Devil Wears Prada』(邦題『プラダを着た悪魔』。映画は11月公開予定)でも、主人公は憧れの『The New Yorker』で働くことを夢見て、キャリア序盤の丁稚奉公を耐え忍ぶ。理不尽極まりない職場の日常にも「いつかは『The New Yorker』で」を合言葉にがんばる。とにかくがんばる。そのくらい『The New Yorker』はすごいのだ。

この本の筆者は、ローレン・ワイズバーガーなる女性。この人の巻頭謝辞がまたあっぱれだ。英語版しか手元にないのでそこから引用する。
「Stacy Creamer—my editor. If you don’t enjoy the book, blame her…she edited out all the really funny stuff」
つまりはのっけから読者にむかって「この本が面白くなければ編集担当を恨みましょう。いちばん面白いところは彼女によって削除されました」と宣言しているのだ。
なんという潔さだろう。
自分もいつかそうなりたいと、切に思う。

12月、新宿武蔵野館にてロードショー
公式HP●http://www.sonypictures.jp/movies/thesquidandthewhale/index.html


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