テキサス・チェンソー ビギニング (0010本目)
「覚悟がなければ……」
あれは2、3年前だったか、『悪魔のいけにえ』のリメイクである『テキサス・チェーンソー』の試写に出かけた。予期していたこととはいえ、電動ノコギリで人間が切り刻まれるシーンの連続に、もともと血があまり得意ではない僕はアタマがフラフラになった。
そして「この手の映画はもう観ない」と心に固く誓ったのだった。当時働いていた新聞で書くつもりだったレビューもなんだかお茶を濁して書かないことにした記憶がある。
だから今回、『テキサス・チェーンソー ビギニング』の試写状が届いたときの僕の最初のリアクションは当然、「パス」だった。映画を観てあんな思いはもう二度としたくない。僕は、結構恋愛モノが好きだったりする普通のオトコなのだ。
しかしその試写状を机の引き出しに封印しようとした瞬間、そこに記されていたあるコトバが僕の注意を引いた。
「失禁寸前ロードショー」
失禁寸前!?このコトバのチョイスはタダモノではない。なにせ失禁である。一瞬、自分の目を疑ったくらいだ。そんなことを公の場で高らかに宣言するのもどうかと思うが、逆に「確かに語弊はあるかもしれないけど、ホントにそれくらいコワイんだよ。マジだよ」という宣伝側のフツフツとした自信が垣間見られる。
ということで、愚かにも過去のトラウマをすっかり忘れてノコノコと試写会場へ。
ストーリーは、シリーズの新作ながら前作の「その後」をつくるのではなく、時間軸をさかのぼって「原点」を探る設定。『バットマン』や『007』など固定客のいるシリーズ物で最近よくある制作手法だ。この映画も、オリジナル『悪魔のいけにえ』(1974)で世界を震撼させた殺人鬼・レザーフェイスはいかにしてレザーフェイスになり得たのか? 今まで語られることのなかった物語の真相を紐解いていく。
このジャンルを愛好するファンにとっては謎解きの要素も多いだろうが、やはりメインはチェーンソーでやたらめったら人を切り刻むシーン。この手の映画をスプラッター映画と呼ぶけど、まさにその名にふさわしく飛ぶは飛ぶはの血の嵐(splatterは「バチャバチャ飛び散る」の意味)。やっぱり血がダメだった僕は途中でツラくなり、映画が結末を迎えたときは、謎解きうんぬんはどこ吹く風、正直、ホッと胸をなでおろした。
「やっぱり自分向きではないな」と改めて反省しつつ歩いた帰り道、手に取ったマスコミ用資料の表紙にこうあった。
「覚悟がなければ、見てはいけない」
すみません、覚悟が足りなかったようです……。
11月11日(土)渋谷東急ほか全国ロードショー
公式ホームページ http://www.texaschainsaw.jp/top.html

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。