沈黙の奪還 (0016本目)
16年目への杞憂
試写会場で手渡されたプレス資料のページを繰っていると、特大フォントで目に飛び込んできたコピー。そこにはこうあった。
「このオヤジ、15年間勝ちまくり」
“このオヤジ”とは、誰あろう泣く子も黙るスティーブン・セガール。その彼が主演する「沈黙シリーズ」の最新作『沈黙の奪還』がこのたび日本公開される。
スティーブン・セガールを一躍有名にした『沈黙の戦艦』から数えて15年目に公開されるこの作品。「15年間勝ちまくり」のコトバからも分かるとおり、現在までとにかく全戦全勝なのだ。向かうところ敵なし。どんな不利な状況で、どんな強敵を相手にしてもねじ伏せてしまう。その無敵さぶりは、女優の藤谷文子をして「お父さん、一度でいいから負けてください」と言わしめてしまうほどだ(ちなみに、これもプレス資料の引用です)。
今回の作品では、スティーブン・セガール演じる元CIA特別捜査官ジャック・フォスターが、死んだ妻の故郷であるルーマニアを娘のアマンダと訪れるのだが、そのルーマニアで娘が何者かに誘拐されてしまう。単なる誘拐か、はたまた何かの陰謀か。娘を無事助け出すため死力を尽くすお父さんというのが今回の役どころである。
そのストーリーの途中、こんなシーンがあった。娘の命を預かる犯人側とジャックが面と向かって直接交渉する場面。娘を奪われた怒りを抑えながらなんとか犯人側の要求に応じようとするが、どちらが銃を抜いたが早いか、両者撃ち合いの銃撃戦が始まる。そして弾丸が四方八方飛び回るなかジャックがこう叫ぶ。
「逃げろ!!」
このコトバを向けられた相手は、その前までの展開でジャックのアマンダ救出に協力することになった「謎の女性タクシードライバー」なのだが、このシーンで気になったのは、字幕では「逃げろ!!」となっていたが、空耳でなければジャック自身は間違いなく英語でこう叫んでいたことだ。
「プランB!」
へ?
いや、ここで問題にしているのは「実はこの字幕、誤訳です」などということではない。なぜなら、そのシーンでジャックが取った行動といえば、まさに「逃げる」ことだったのだ。銃撃戦の場からあわよくば娘とともに逃げおおせる、ただそれだけだった。ある意味、字幕は場面の本質を捉えていて正しい。問題は、そんな運まかせの“計画”が、ジャックにとっての「プランB」だったことだ。
もしジャックが緻密な頭脳派であるのなら、プランA(今となっては最初のシナリオがどんなものであったのか知るのも恐ろしい……)が、計画通りいかなかった場合の代替案たるプランBは「逃げる」以上のものであるべきではなかったのか。相手が裏をかいてきてもさらにその裏をかくような、起死回生の計画を立案できなかったのか。
一時は、ブルース・リー以来のアクションヒーローといわれたスティーブン・セガールも今や御歳55歳。カラダのキレも以前ほどではない。今後も連勝街道を行くのであれば、やはり体力面以外も鍛えておかなくてはならないのではないか。試写会場を後にして、スティーブン・セガールの16年目が心配になった。
2007年1月13日(土)よりロードショー
公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/shadowman/index.html

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。