真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章 (0026本目)
北斗神拳、暗黙の台詞
今回の映画は、『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 激闘の章』。試写会1000本ノック始まって以来、初の邦画でありアニメです。
試写会場は、九段下にある九段会館。完成披露試写会とあって普段のマスコミ試写会と違い一般の招待客(=ファン)も多数いて、現場には普段感じられない熱気が漂っている。特に理由があるわけではないのだけれど、普段、アニメはおろか邦画もろくに見ない僕としては、会場に漂う“期待”に鼓動する空気、あるいは体温の高さみたいなものになじめない。
「つまるところ、この人たちってみんなオ○ク?」
気を許すとそう口をついて出そうになる。あぶない、あぶない。そんな発言をするやすぐさま北斗七星の形に胸を突き刺されそうな殺気さえ感じられる。
ともあれ『北斗の拳』といえば、主人公ケンシロウが秩序なき世紀末に暴力と恐怖で君臨する悪漢を、「おまえはもう死んでいる」の決まり文句とともになぎ倒していくストーリーが多くの人の心を捉えた。なにを隠そうこの僕も少年ジャンプ連載時代はよく読んだものだ。「おまえはもう死んでいる」のほかにも、秘孔を突かれた悪漢が発する「あべし」やら「ひでぶ」などの意味不明な断末魔の叫びも人気を博した。
だからある意味、この試写会へ出かけたのも当時へのノスタルジアが関係していないと言えばウソになるだろう。
そして映画がスタート。しかし始まってからしばらくしてあることに気づいた。ケンシロウの無敵ぶりは相変わらずなのだが、僕が少年期になじんだ『北斗の拳』とは明らかな違いがあったのだ。
決まり文句を口にしない。
これはなぜなのだろうか? たとえば、ある若者がラオウ軍への徴兵を拒否するシーン。弱者への容赦ない暴力を見かねたケンシロウが救世主のごとく登場する。そのラオウ軍の兵士と対峙する際、お決まりの秘孔突きは披露するものの、必殺の絶対必要条件とも言える「おまえはもう死んでいる」を口にしないのだ。これはなぜなのだろう? 見ている間に疑問がフツフツと湧いてくる。僕が『北斗の拳』を読んでいた少年期から多くのことが変化した証拠ということなのだろうか? 前作を未見なので不明だが、それ故かケンシロウが悪漢と戦うシーンを目にしてこう口ずさんでいる自分がいて驚いた。
「お前はもう死んでいる」
いや、さすがに声に出すことはできないのだが、心の中でそうつぶやく自分がいた。そしてふと我に戻って気が付く。当初、一歩引いて見ていたはずの会場を埋める北斗の拳ファンと同じ種類の熱気を帯びているじゃないか。
まずい、そんなはずではなかったのに……
そう頭では分かっているつもりでいるがもう遅い。そしてケンシロウが次の決闘におもむき、またもや敵を蹂躙する。そして胸にその台詞がこみ上げてくる。
「お前はもう死んでいる」
4月28日(土)より全国ロードショー
公式ホームページ:http://www.hokuto-no-ken.jp/

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。