ウィッカーマン (0031本目)
デジャブまたはアルツ?
最近はめっきり暑くなったので、試写への道をそそくさと歩いていると会場に到着したころには汗ばんだりしていることがある。そんなときありがたいのが冷房の効いた試写室。腰を下ろし、息を整え、汗が引くのを待っていると、心地よい昼寝の予感が……。
いかん、いかん。
映画を観るために足を運んだのでした。決して昼寝のためではなく……。
ということで今回の映画はニコラス・ケイジ主演の『ウィッカーマン』。白バイ警官のメイラス(ニコラス・ケイジ)は、元婚約者であるウィロー(ケイト・ビーハン)の娘がとある孤島で行方不明になったことを知る。
理由も告げず自分のもとを去ったウィローからの突然の連絡に戸惑うも、警察官としての義務感か、はたまたウィローへの未練か、メイラスは問題の孤島へ事件解決のために向かう。しかし異教の信者らしき人々が住むその孤島で、メイラスは少女の行方不明事件よりもさらに巨大な謎の渦に巻き込まれていく、というのがメインのプロットだ。
この映画は1973年に制作された同名のオリジナル作品のリメイク。まさにその1973年生まれの僕は、当然のごとくオリジナルを観たことなどない。しかし映画が始まって驚いた。というのも見たこともないはずの映画のストーリー展開が手に取るようにわかるのだ。
たとえばオープニングのシーン。アメリカの片田舎にある典型的なダイナーで物語は始まる。そこでウェイトレスが画面外にいる客に何気なく声をかける。そしてこの瞬間、ふと頭に次の言葉が浮かぶ。
「ニコラス・ケイジの登場だ!」
そう思ったが早いか、メイラス役を演じるニコラス・ケイジがスクリーンに登場する。その後しばらくすると今度は脳裏に次の言葉が浮かぶ。
「次は、白バイに乗ってスピード違反の取り締まりに繰り出す」
そして、そう思ったが早いか、場面はこれまた片田舎の道路でスピード違反のチケットを切るニコラス・ケイジの姿に切り替わるのだ。そのタイミングと小気味の良さは、まるで自分がキューを出してすべてを監督しているかのようだ。これまでにそれなりの数の映画を観てきたつもりだがこんな体験は初めてだ。その後も同様のデジャブは続く。ちょっとビックリ。これって何かの予知能力? そう思ったのも束の間、ある事実に気づいた。
「この映画、観たことある……」
試写状が手元に届いてからそれほど日も経っておらず、しかも9月公開と先のことなので油断していたのだが、実はこの映画をすでに鑑賞済みだったのだ。しかも年初に乗った飛行機の中で。つまるところ予知でもなんでもなかった。ただこの映画をすでに観たという事実をすっかり失念していたのだ。
このショックは、メイラスが迎えるシュールなエンディングよりも大きいものだった。なぜ試写状に大きく書かれたタイトルを見て気づかなかったのか? 飛行機などで映画を観た場合、よくあるのが原題と邦題にあまりにも“開き”がありすぎて同じ映画であることに気づかないことだ。たとえば……。
『恋人たちのディスタンス』と『Before Sunrise』。
どうしたらこの二つのタイトルが同じ映画を指してると知りえよう? しかし今回の映画に限って言えば、原題は『The Wicker Man』。そう邦題となんら変わりなかったのだ。違いと言えば、アルファベットかカタカナかだけだ。そして家路につく途中、頭をうなだれて思った。
「俺はアルツか?」
9月1日(土)新宿トーアほか全国順次ロードショー
公式ホームページ:http://www.wickerman.jp/

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。