モーテル (0038本目)
以前、英語圏の人とくらべた日本人のあだ名へのこだわり(?)について少し書きましたが、アメリカの小説などを読んでいると、こんなあだ名の登場人物がいたりする。
たとえば、エド・マクベインの『87分署シリーズ』だったか何かで(すみません、最近トシのせいなのか、記憶がまったくもってあやふやで)、ビッグ(Big)なる人物が登場する。その名前から想像するに、アンドレ・ザ・ジャイアントでも登場するのかと思うと実はチビのちんけなチンピラだったりする。要するに現状の真逆をもってしてあだ名とするのだ。
そのあだ名をつけられた本人にとっては、誰かに呼ばれるたびに苦虫を噛み潰すような気分だろうけど、別の本では(これまた出典不明です。少し宵のお酒を控えるかな……)、こんな登場人物がいた。
「ブロンド」
そう「金髪」だ。じゃあこの人はこうべを垂れた麦穂のような金色に髪の毛が燃えているのかというと、いやそうではなくご想像のとおり……、
「ツルツル」
なのだ! いやはや、そんなあだ名をつけられた本人は迷惑千万だろう。
とここまで書いて、ふとクエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグズ』にも、「ミスター・ブロンド」っていうキャラクターがいたのを思い出したけど、あの人は確かツルツルじゃなかった。まあ、何はともあれ、逆説的あだ名の法則(?)を利用するとなんでも可能な気がする。
と、前置きがすっかり長くなってしまったけど、なぜ、そんなことを思ったかというと、今回久々に足を向けた試写でふとそんな思いが去来したのだ。
映画は『モーテル』、プロットはこんな感じだ。アメリカの片田舎を真夜中にドライブするカップル(ケイト・ベッキンセール&ルーク・ウィルソン)がクルマのエンジントラブルに見舞われる。行く宛のない山の奥深く。窮したふたりはかろうじてたどり着いたモーテルに投宿する。
このモーテル、どこを取ってもあやしいのだ。普通は「いくらなんでもそんなとこ泊まらんだろう」的な雰囲気いっぱいなのだけれど、そこは映画。「とりあえず一泊だから」とそそくさと与えられた部屋へと向かう。その後、ふたりに何が起こるかは想像に難くない。ましてや「宿泊料イノチ」、「誰もチェックアウトできない」なる映画の宣伝文句もサスペンスを盛り上げるというよりは、「どうせこんなストーリーなんでしょ」的な予定調和の水先案内にしかなっていない。
映画の内容に関して、ここでは特にうんぬんしないにしても、やっぱり血が苦手だった僕はイマイチ集中を欠いたのもあるけど、これといったアジェンダもダイアローグもなく、「これってあきらかに『リング』?」、「それは『サイコ』でしょ?」みたいな過去の映画からの拝借がなんか多くないか?そう思わせる内容だった。
そして最後にエンドクレジットが流れるのを漫然と眺めていると、プロダクション会社の名前が出てきた。その名も……、
「Screen Gem」
スクリーンは当然「映画」、そしてgemは「宝石、珠玉」の意味だ。つまりは珠玉の映画を提供する会社。でも、しかしそれって手前味噌でないか? まぁ、それはおいて、そのときふと思った。
「これってもしかして、逆説的につけた名前?」
だとしたら、社長やプロデューサー以下、いい根性してるなぁ。まぁそんなこと太陽が西から昇ってもないとは思うけど、そうだったら無条件に素晴らしい。そう思った試写からの家路だった。
11月17日(土)東劇ほか全国ロードショー
公式ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/vacancy/

それぞれの「引き出し」を
つくっているのはこんなひとたちです。