食のアベレージ

一杯380円の牛丼を販売するために掲載された、全国紙の一面広告。
それを見て痛感しました。この国の食文化における底辺の厚みと
アベレージの高さは、エベレスト以上かもって。

5年前に、いわゆる“ディープ”な讃岐うどんを現地で食べたんですが、
あれはソバ派の僕にとって衝撃的な味覚の一大事でした。
味わいと同じくらい驚いたのは、一杯90円という値段。
そのうどん屋(というか本来は製麺工場)のお上さんは
「おいしいと言ってくれるうどんを毎日つくりたい」と話し、
「毎日同じ味を保つのはむずかしい」と苦笑いして見せたのでした。

言葉を失いましたね。100円でお釣りが来る食べ物に
そこまでの情熱を傾けられる気概を前にして、
どんな言葉を用意すればいいのかまるでわからなくなった。

だからこの国の食文化におけるプライドは、値段じゃ計れないんです。
たぶんどこの国の人も、おいしいものが食べたいに決まってる。
でも、ここまでおいしいものに、しかも安くて旨いものに
貪欲な国民ってほかにいるんでしょうか?
戦国時代の携行食を起源とするらしいおにぎりでさえ、
いまや専門店があるんだもんね。

そうした「安くて旨い」を軸にした食文化の美徳は、
おそらく全国民の共通認識となってるでしょ。
よほどのセレブだって、おにぎりのおいしさに日本人であることの
よろこびを感じ取れて、「やっぱり新米の塩むすびは贅沢ね」なんて
言ったりするんじゃないかと思うんです。

吉野家の社長さん、泣いてらっしゃいましたね。
あの涙は、使命感から来てるんじゃないかな。
牛丼復活が次期総裁選より注目を集める国に僕らは生きてるんだなあ。
と書いていて、予想通り、牛丼が恋しくなりました。


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