師走三日

「20年前にもどってみたいと思う?」
なんて質問はお酒の席っぽい戯言の類ですが、
非現実的を承知で答えると、僕はもどりたくない。
なぜなら、肉体的若さが復活するよろこびよりも、
精神的抑圧の再生のほうが心底イヤだと思うから。
さんざん苦労して手に入れた経験を手放すのは、
やっぱりどうあっても惜しいわけです。

でも、懐かしさはあります。
たとえば昨日のように、天気予報よりうんと早く雨に降られて
現場でロケ中止を決断するとき、
経験が浅かった20年前の僕なら相当にあわてたはず。
仕切りなおしの決断に時間がかかり、
関係各位との調整に必死になって、無駄に疲れたことで
お門違いの充足感を覚えたりする。
そんな過去の自分を振り返ると、笑っちゃうくらい愚かで、
少し愛しかったりもします。

なんかね、伸び代が減ったのかなあ、とか、
駆け上がる階段の一段が低くなっているような、
そんな気にもなるんです。
もちろん、たくさんの経験を積んだことで
狭くなった伸び代の奥行きに気づけたり、
踏み出す一歩の重要性を知ることができてはいると思うんです。

ただ、床に転がったビー玉で足を滑らせるような焦燥感が乏しくなって、
それって年を取ったってこと? と自問自答するような自分になるとは、
20年前の僕には想像できなかった。

夕方になったら晴れました。
そういうもんだよね、と首をすくめてみる2007年の師走です。


T・T ディレクトリー   リンクフリー   プライバシーポリシー      運営会社