誤植

間違った字を当ててしまったことを、誤植と言います。
何を誤って植えるかというと、それは文字なんだけど、
文字を植えるってちょっと変でしょ?

僕の見解では、これは活版の名残なのですよ。
活版とは、活字による刷版です。活字は、たぶん鉛で鋳造した
文字の形をした金属。それを原稿に従って箱に並べ、
そこにインクを付着させて大量に印刷するのが活版印刷。

ということは当時、ここまで書いた約200字すべて
活字の棚から見つけ出し、箱に収めていたわけです。
それが字を植えてゆくように見えたんだと思う。
だから植字という言葉もあります。

活版の後、ガラス面に文字を映した板を使って植字し、
印画紙に焼き込んでゆく技法が生まれました。
これは写真植字、略して写植と呼びます。
僕が編集の世界に入ったときは、この写植が主流でした。

おそらく、誤植というものが本来の意味をなしていたのは
この時代までです。
活字も写植もそれのみを行う職人さんがいました。
昔はね、一度活字になった原稿を簡単には書き直せなかったんです。
気まぐれを職人さんに押し付けるのが申し訳なかったから。
ワープロやパソコンが普及してそういう気遣いは解消されたけど、
その反面、原稿を書き上げる真剣さは薄らいだのかもしれない。

僕もここでしょっちょう誤植をします。でも、人知れず直しちゃってる。
すべてを自分ひとりでまかなえるのは便利だけど、
どこかで誤植の怖さを忘れているような気もするんですよね。


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