新米
母親がお米を送ってくれました。正確に言えば、叔母さんが送ってくれたものがスルーされたんですが、いずれにせよ新米です。
半農の叔母さんがいろんな収穫を送ってくれるのは昔からのことで、僕が実家で暮らしていたときも、この時期になると米屋さんとかで見る藁半紙色の丈夫な紙袋に入った米がどっさり届きました。
ある年、たぶん僕が中学生だったころ、その米袋にネズミが入り込んでいたことがありました。最初はわからなかったんです。夜になると部屋の隅からごそごそという音が聞こえ、やがて僕のシャツやら何やらが変に千切れるようになった。
事態を掌握した父親は、妙な音が聞こえはじめてから数日経った夜、どこで買ってきたのか白い毒饅頭を仕掛けました。
翌朝、僕は絶叫で目を覚まします。母親の叫び声なんてはじめて耳にしました。ああ、この人も女の人なんだなあと思いました。
と同時に毒饅頭の成果が現われたことを悟り、リビングとは名ばかりの六畳に向うと、小さな灰色がぽつんと座布団の上にありました。何だかとっても哀れに見えたことを覚えています。
そんな感情などおかまいなしに、父親はその灰色の先の細い肌色をひょいとつまんで、どこかに持っていきました。
その行方は知りません。ただ、父親はやっぱり男だなあと感心し、それに触らなくてホッとしている自分はしっかり子供なんだと思いました。
今年の米の袋を見て、そんな記憶がふっとよみがえりました。いずれにせよ新米です。だんだん秋になっていきます。
