裸足

「裸足で靴をはくなんて、もういい加減にしなさい」
そう言われたらしいです、28歳の女子美容師は。

ひと夏またいで髪を切りに行きました。
僕の担当は、確か副店長の男子美容師で、その女子美容師、
仮にM子さんはかつて彼のアシスタントでした。
はじめてその店に行ってからもう6年。いまじゃM子さんも
アシスタントをつけるほどになりました。

そうして偉くなったのに、僕の姿を見かけると話に来る。
で、ふと交わした会話の断片が冒頭の一節です。
セリフの主は、彼女のお母さん。
時々M子さんの店に足を運んで、彼女に髪を切ってもらうそうです。

「でもね、ウザいんですよ。あれこれ口うるさくって」
他にどんなことを言われるの? と聞いたら、
「髪の毛オレンジに染めて、それ変よ、とか……」。
ははは、確かにウザいかもね。
でも、親だから投げられる直球なんだろうなあ。

きっと親ってのはいつまでもうるさい存在なんでしょう。
僕も子供のころにさんざん言われたことを思い出しました。
よく覚えているのは、箸の持ち方と、手荒れ。
いずれも父親の指摘でした。理由は、みっともないから。
箸はともかく手荒れを叱るってのも変な話で、実際ウザかったけれど、
出掛けにクリームを塗る習慣はいまでも続いています。

「靴下、絶対履かない。寒くなったらタイツだし。だからいいんです」
何がどういいんだかわからないけど、
天気のいい秋のはじめにふさわしいような、
いい話だなあと思ったんですよね。


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