ツバメの奥さん

住宅街にある小さな撮影スタジオに行ったら、
ツバメの巣がありました。
道路に面した駐車場の屋根の梁。半円錐状の泥の住まいは、
下から見上げるだけだとヒナがいるかどうかわかりません。
そこでじ~っとながめていたら、僕の気配に反応したのか、
小さな三つの頭が顔を出しました。

しかし、ツバメのヒナってのは親に似ず不細工です。
顔のほとんどはクチバシ。しかも毛むくじゃら。
声だってグェ~ですからね。でも、健気。なんか愛しい。

「今年は2回目なのよ」と大家の奥さんが言いました。
「前回は、巣立つ直前になってカラスに食われちゃったのよ。
カラスは賢いから、食べ頃を狙っていたのね」
などと悲惨なエピソードをさらっと話してくれました。
それを聞いて、なんてカラスは悪いヤツと思ったんだけど、
奥さんがそう言わなかったのは印象的でした。
食べ頃、というユニークな表現とともに。

「だから今回は、駐車場にカラスが入るのを防ぐシャッターを
主人がつくったのよ。鉄の棒のスダレみたいなやつ」
わざわざ? ツバメのために?
「それから、巣の途中が灰色になってるでしょ。
あれも主人が粘土で補強したの。落下防止用に板を張る手も
あるみたいだけど、それだとカラスの足掛けになっちゃうでしょ」

でも、糞で床が汚れませんか? 
「ほんの一時のことだから」

ああ、人間って優しいんだなあと思いました。
憎しみも悲しみも怒りも憤りもあるけれど、
時にそれを凌駕する感情も持ち合わせているんですよね。
そして、8月6日になりました。


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