白を切る
待ち合わせの場所まで、およそ50メートル。
その方向こに目を向けたら、手を振りながら歩いてくる人がいた。
仲間だな、と確認する以前に反射的に手を振り返す。
十数秒後、その人の顔が判明するほどの距離まで近づいたら、
会ったこともない人だった……。
こうなると、僕という人間は白を切ります。
あなたに向けて手を振ったわけではなく、ましてや手を振った
ことすらなかったような態度で歩き続ける。ふふん、とね。
似たようなことはクルマに乗っているときにも起こります。
窓を閉め切って大声で歌っている最中に、信号待ちで停車。
すると、なぜか呼ばれたかのようにとなりに停まったクルマの
運転手や助手席の人のほうを見ちゃう。で、視線が合う。
というような場面でも、僕は白を切る。
どうせその前から「ああ歌ってら」と思われてんだろうから、
あなたに見られたことなど気にしないし、
このサビは歌い切るからねと宣言するみたいに。
白を切る。
どうやら「知らないふりをする。知らないと言い切る」に
端を発した言葉のようですね。白は当て字だそうな。
なかったことにする=無=白、というのは、いま思いついた流れ。
そんなわけで、ようこそ、ご先祖様。
あなたの子孫は羞恥心を忘れかけていますが、
ふてぶてしくも元気で盆を迎えております。
