胃の中の僕は
井の中の蛙、大海を知らず。これ、英語でも
「The frog in the well knows nothing of the great ocean.」
と言うようで、日本のことわざを直訳したらしいですね。
でも、大元は荘子のお言葉ですけどね。
食べ物屋さんの話です。きっと東京には、あるいは世界一と言っても
過言じゃないほどたくさんの食べ物屋さんがあるのに、
そのほとんどを知らない。それは大損じゃないかと、この前はじめて
会ったヘアメイクの女性と嘆いたんですね。
たとえば、『今日のアテ』のモリさんの話を聞いていると、
ああオレは見事なまでに損していると思うし、
なにしろモリさんの情報量には毎回驚くわけです。
モリさんがスゴいと思うのは、どの店のご主人なり看板娘と親しいって
ことなんですよね。そうして一見さんには提供されない
特別なサービスを受けている。
そのサービスを受けるには、やはり足繁く通うほかにないのでしょう。
確かにおいしいものは食べたい。素敵な食べ物屋さんをたくさん
知っているほうがカッコいい気もする。
だけど、多くの場所に足繁く通えない根性なしの僕にも、
この大都会の中で、ひとりで行ってもあったかく迎えてくれる
店がふたつだけある。それでひとまず満足。
だってさ、黙って食べるのって楽しくないじゃない?
ひとりならお店の人と話したいじゃない?
そんなわけで胃の中の僕は、小海を深く潜るのです。
ちょっと負け惜しみみたいだけどさ、
つくってくれる人と仲好くなりたいんだよね。
