カット!

ドラマっていいなあと思うことがあります。その場を一変させるような
カッコいいセリフを言ったところでスパッとカット替わりするでしょ。
防ぎようのない悲劇が訪れた瞬間にコマーシャルになるとか。

でも実際の僕らの暮らしでは、それは叶いません。
いいことも悪いことも、そのどちらにも属さないことも、
おおむねずるずると引きずるしかない。
カッコいいセリフを言いたくても赤面しそうだから躊躇したり、
雪崩のような悲劇はそれこそ誰にも止められなかったり。

ものすごく単純に言えば意見の相違が原因で、
もう二度と会わないと決めた人がいます。こんな話はしたくないし、
だからそういう人はつくりたくもない。

その人から突然電話が来ました。会おうと。
相手の身に降りかかった変化が理由です。まぁ、ドラマティックですよね。
出来合いのドラマなら、それを機会に僕らは和解するのかもしれない。
握手なんかしちゃったりして……。

でも、たぶん現実は違うんだろうなあ。それで相手の見方が変わったり、
芳しくない記憶が鮮やかに色づけされることはないと思うんです。
ずるずると引きずった、カット替わりのないそれ以降の日々を
脚本から削ってもらう術も知らないしね。

たとえば引退会見の様子が繰り返し流される横綱も、
いまこの瞬間はひとり沈黙の殻に閉じこもっているかもしれない。

そうして僕らは、伏線を張り巡らされたドラマなんかより
はるかに複雑で予想もつかない、そのくせ語るほどには面白味の少ない
展開を甘受していくのでしょう。

誰かが「カット!」と叫んでくれたら、あるいは楽になるのかな?


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