知の欲求
「あなたの父上には人類史上まれに見る身体的特徴があることが
判明しましたので、つきましてはお墓から骨を一本お借りしたい」、
などといきなり電話で言われたらどうします?
その史上まれな特徴にどんな価値があり、何に寄与するのかは
大いに興味があるけれど、でもたぶん僕は断ります。
寝た子、じゃなかった、寝た父を再び起こすことに息子として
拭いきれない抵抗があるから。
「じゃ、おじい様ではいかがでしょう?」と切り返されたら?
僕は祖父に会ったことがないので、それはそれで別の関心があるけど、
父親の気持ちになったらやはり断っておくべきだと思うんですね。
「それでは江戸時代のご先祖ではいかがですか?」
っていうか、あんたはどこの調査機関なんだ?
そもそも江戸時代に生きた祖先の墓がどこにあるのか教えてほしいぞ。
いやそれ以前に、子孫で存命中のオレには受け継がれてないのか、
その人類史上まれっていうヤツは……。
などと阿呆な妄想を口走っておりますが、ツタンカーメン王の死因が
判明したというニュースがここまで僕を転がしました。
あれは誰の許可を取ったのかなあと。そういう段取りよりも
人類史上の謎に迫る発見が優先されるんだろうか?
じゃお前には王家の秘密を教えないと言われたら辛い。
けど、ミイラが気の毒に見えたんですよね。
果たして人間は知の欲求にどこまで従順であるべきか?
僕はミイラになった自分を人前にさらしたくないです。
すでにどうしようもなく眠っているから。
痩せて見えるからいいかも? んなバカな。
