水色の校舎

子供の頃の僕にはちょっとした悩みというか、疑問がありました。
僕に見えているものは他の人にも同じに見えているんだろうか?
なんだか哲学的な葛藤に聞こえたりもすれけれど、
ただのガキンチョだったから、別に高尚でもなんでもなく、
ふとそう思うことがあっただけの話です。

たとえば校舎。僕の目には灰色の4階建てに映るけど、
他の誰かには水色に見えたりはしないんだろうか? とかね。
でも、そういうことを誰かにたずねるのはあまりにアホらしくて
気が引けたんだろうなあ。
一度も他人に「校舎、何色に見える?」と聞いたことはなかった。

やがて大人になり、モノの見方、見え方には個人差があると知り、
僕なりの見方で何かを伝える仕事を選んでみて、
小さな挫折を繰り返しています。
経験値として得たのは、すべては伝わらないってことでした。
もちろん伝え方の拙さはあるだろうし、あるいはどんなに上手に
説明できたとしても、人は自分の経験に沿った、
自分にわかりやすい納得しかしません。僕だってそう。

でも、それでいいと思うんですね。
僕に見えている通りに他の人が見えなくても悩むことはない。
ただ、イメージの断片が提供できればそれでおおむねOKじゃないか?
ま、それすらできなくて挫折するんですけど。

でもね、灰色の校舎が水色に見える感性があったなら、
僕はもちっと人を感動させられる物書きになれたんだろうなあと、
子供の頃の疑問が解けたいま、少しだけがっかりしてます。
自分が見えちゃった、って感じ? 


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