インベルグおばさん
アバウトなフライトスケジュールで混乱する空港。
そこで出会った律儀なご夫婦。
旅の途中で、こんな一期一会がありました。
東京へ一時帰国。
今朝のチンギス・ハーン空港はいつもと様子が違っていた。ロビーに入るなりやけに混み合ってるなあとチェックインカウンター方向へ視線を移すと、人の列に動く気配がまったくない。
情報を集めてみると、どうやら何らかのトラブルにより、朝からまだ飛び立てずにいる飛行機が数機いるようなのだ。一日に離陸して行く飛行機自体、おそらく10機未満であろうから、これはなかなかの問題だ。
さらにあれこれ聞き出してみると、俺がチェックイン予定のカウンターが開くのが今から一時間後の予定と言うではないか。これはほぼ出発時刻にあたるから「う〜ん、こりゃ間違いなく遅れるな」と覚悟を決める。
あろうことか、俺が搭乗予定の飛行機が飛べない理由は「強風」。これまで、何度か飛行機の遅延や欠航を経験したことがあるけど、強風で飛べないってのは初めて聞いたぞ。
しかし、外は穏やかに晴れている。「上空だけがそんなに荒れてるのかなあ?」なんてやや疑いつつラウンジで様子を見ることに決め、縄張り確保。すぐ横には60代と思しき夫婦が静かに座っていた。どちらからともなく、なんとな~く会話が始まる。
お二人はドイツ人。モンゴルが好きで、数年前から毎年訪れているという。娘さんがニューヨークに住んでいて、一緒に来るはずだったが仕事の都合でダメになったらしい。特に奥さんの“インベルグおばさん”とは会話は弾んだ。
彼女いわく、「モンゴルは5年くらい前から急激に観光客が増えた。それまでの街はもっと汚くて、まったく整備されてなかった」とか。俺から見ると、今でも幹線道路でさえ一応は舗装されてはいるものの穴だらけでボコボコ。以前にも書いたが交通事情もムチャクチャだから、当時はどんなだったんだろうと興味が湧く。
「きれいになったのは良いけど、今はどこに行っても観光客があふれていて、それはそれでねぇ……」。ふむ、一長一短といったとこか。
俺がチンギス・ハーンの映画の撮影でここに来ていると話したら、なかなかの興奮ぶりでかなり映画を見たがってたよ。ただ、「あなたがこっちの馬に乗ったら、足が地面に着いちゃうんじゃないの?」だってさ。
「モンゴルもいいけど、たまには日本へもどうぞ」。そんな感じでドイツ、モンゴル、日本についての話題に終止符を打ち、ようやく俺の乗る飛行機が3時間遅れの午後2時30分に出発することに。インベルグおばさんのおかげでまったく退屈せずに過ごせました、ありがとう!
ちなみに、このご夫妻が乗るはずの飛行機の出発予定時刻は午前6時30分。すなわち、チェックインのために午前5時には空港に来ていたというから、すでに9時間もここで待ってるのだ! 皮肉混じりに笑ってラウンジで働くひとりの女性を指差しながら言ってたよ。
「今朝、私たちは誰よりも早い時間からここに来てるの。あの子よりも早い時間からここに座ってるんだから! あなたも先に行ってしまうのね。最後にここを出ることにだけはなりたくないわねぇ。」
お二人が今日中に無事出国できていることを祈る!!! それにしても恐ろしい湿気にタジロイだぜ、東京。(8月7日)
モンゴルの空港でドイツ人と日本人が語り合うなんて、実に奇妙で、二度とない偶然かもしれませんね。いい話!(T.T.)

