公開2日前/オレ、死んだ……

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Ph/Okamura Masahiro


T.T. 『モンゴルからの手紙』で、大平原ロケも終盤に近づいたら文字数が格段に減ったでしょ。言葉にならない思い、みたいなものがあった?
祐介 ジャムカのラストシーンが迫ってくると、なんとも複雑な心境でしたね。死ぬんです、戦いに敗れて。最初からわかっていたストーリーなんだけど、いざその日が近づくとねぇ。

T.T. それはジャムカになりきっていたから?
祐介 う~ん、なんて言ったらいいのかなあ。ラストシーンに向かう気持ちの下地なっていたのは、芝居自体に迷いを感じながら、それでも自らを鼓舞して信じて過ごしてきた日々と、経験不足なオレを励ましてくれた他の役者さんやスタッフの方々に対する感謝の気持ちだと思うんです。そういうものづくりに対する思いがどんどん積み重なって、最後の最後に弾けたというか。その上で現場に立ったときに、テムジンへの思いやジャムカの心情そのものが自分の中に強く感じられたんです。その意味では憑依してたのかなあ……。うまく表現できませんねえ。
T.T. そんな複雑な心理状態のなか、よくぞ『手紙』を書き続けてくれました。

祐介 最終日は大変でしたよ。朝、ロケバスから降りた瞬間から涙をこらえてましたから。メイクさんが異変を察知したらしく、「どうしたの? ご家族に何かあったの?」とひどく心配してくれちゃって。
T.T. 笑っちゃいけないけど、状況としてはおかしいね。


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祐介 そういう感情をジャムカのラストシーンでどう表すか、事前にあれこれ考えてみたんですけど、直前になってみたら成すがままに任せようと思ったんです。監督からは「泣くな」と言われてたんですけどね。ジャムカは感情表現の不器用な男だから、大粒の涙をこぼすという感じじゃない。必死にこらえて、最後の最後ですうっと一筋頬を伝うという芝居ができたら器用だとは思ったけど……。

T.T. 実際はどうだったの?
祐介 それは作品を観てください(笑)。けれど不思議なもので、そこまで感極まっているのに、そういう状況ではセリフを噛まないんです。しかも、どんな演技をしたかすら気にならなかったんですよ。ジャムカのラストシーンは、本編が編集されるまで見ませんでしたね。
T.T. まさに“境地に達した”という状態なんだろうね。
祐介 オレ死んだ、って感じでしたよ。役者ってのは毎回ここまで突き詰めるんだと思ったら、本当に大変な仕事だなと。寿命、縮みますよ、マジで。でも、あのラストシーンは貴重な経験ですね。そこを越えれば、日々の悪戦苦闘から解放されるだろうと思ってた。違いましたね。ジャムカの最期が、オレの役者としてのスタートなんだと悟りました。

T.T. 終わりがはじまり、なんだ。
祐介 撮影が終わってしばらくはヒゲを剃れなかったですね。モヒカン切っちゃうのもためらってました。すごくさびしい気持ちでしたよ。ジャムカとの別れもそうだけど、モンゴルの平原の空気にもう触れられないんだと思ったら、なんかねぇ。
T.T. それって、恋みたいだね。
祐介 恋? う~ん、恋みたいだったのかなあ。


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